
報告書や議事録など、業務の中で文章を書く機会は多々あります。
あなたの文章は、読んだ人に伝わっていますか?別途口頭での説明を求められたり、何度も書き直しを指示されたりしていませんか?
この記事では、「伝える」ことを最優先したシンプルな文章のコツをご紹介します。
食材を確認する
まず大切なのは、あなた自身が「伝えたいこと」の内容をきちんと理解しているかどうかです。
報告書や議事録は、基本的には事実を伝えるためのもの。「いつ」「どこで」「だれが」「なにが」など、実際に起こったことを書く必要があります。
なにが起こったのか知らないままでは、当然、文章を書くことはできません。
自分が持っている情報を整理し、把握できていない部分があれば、再確認しましょう。周囲の人に尋ねてもいいでしょう。
料理に例えるなら、冷蔵庫を開けて、いまどんな食材があるかを確認する段階です。
レシピを検討する
いきなり文章を書き始めるのではなく、はじめに「伝えたいこと」を箇条書きにしましょう。
行き当たりばったりで書き始めてしまうと、文章は迷走します。
「伝える」ことよりも、文章のかたちを「作る」ことに集中してしまっていませんか?
それらしいかたちを「作る」ために、伝えなければいけない要素をそぎ落としたり、余計な表現を付け加えたりすると、最大の目的である「伝える」から離れていってしまいます。
何を、どんなふうに「伝える」のか。方針を定めるためにも、箇条書きして整理しましょう。
【例】
・午前10時、●●さんが病室で転倒
・△△先生が診察、レントゲンの指示
・床が水で濡れていた
もしここで箇条書きにできないなら、「伝えたいこと」の内容が理解・整理できていないということ。もう一度、事実の確認をしましょう。
料理に例えるなら、いまある食材からレシピを検討して、どんな料理を作るのか決める段階です。
調理する
伝えたいことをリストアップできたら、いよいよ文章を組み立てていきます。
さきほど箇条書きにした「伝えたいこと」を、必要な形式に添うように組み替えます。
報告書であれば、基本的には時系列で文章をつくります。何が起こったかを、順を追って説明しましょう。
議事録であれば、議題(テーマ)ごとにまとめることになるでしょう。
箇条書きのままでも内容は伝わりますが、文章形式での提出を求められることがほとんど。
主語や述語を整理し、助詞(てにをは)や句読点で読みやすくして、箇条書きひとつがひとつの文になるよう整えてください。
このとき、「一文一義」の法則を守ることで、わかりやすい文章になります。「一つの文章では、一つの情報だけを伝える」というものです。
文章作りの初心者にありがちなのが、一文が非常に長くなってしまうこと。これも、それらしい文章を「作る」ことに集中した結果です。
「伝える」を重視するなら、箇条書きにほんの少し手を入れて一文を作るくらいの気持ちで大丈夫です。
【例】
・午前10時、●●さんが病室で転倒
・△△先生が診察、レントゲンの指示
・床が水で濡れていた
↓
午前10時に、●●さんが病室で転倒した。病室の床が、水で濡れていた。
△△先生が診察し、レントゲン撮影の指示が出た。
一通り書きあがったら、必ず読み返してください。可能なら、声に出して読むのがいいです。
不自然な点や伝わりにくい表現がないかどうか、提出前に確認してください。
料理であれば、レシピ通りに調理を進めていく場面。アレンジはもう少し料理に慣れてからにして、まずは忠実に手順を追い、完成させましょう。
はじめからフルコースは作れない
各種文学賞にノミネートされる書籍をはじめ、世の中に公開されている文章には、読みやすく整えられているものがたくさんあります。美しい表現技法が使われ、書いてあること以上の情景が浮かぶものも。
そうした文章に触れると、自分もこんな風に書かなければいけないと勘違いしてしまうかもしれません。
しかし、報告書や議事録で最も大切なのは、「事実を伝えること」です。
無理をして文章を飾り立てることに執心し、「伝えたいこと」が伝わらない文章に意味はありません。
料理の初心者が、いきなりフルコースを作れないのと同じです。調理実習くらいシンプルなところからはじめて、少しずつ上達していく必要があります。
シンプルに「伝える」ことができるようになり、それに慣れてきたころにはじめて、表現技法やアレンジを試してみることができるのです。