Notionで医療機関の施設基準を管理する

【noteから記事をこのブログへ移行しました】

今回から、医療機関でのNotion活用について、具体的なアイデアを挙げてご紹介していきます。

第1回のテーマは、施設基準の管理。
医療機関が診療報酬を算定するにあたり、満たしておかなければならない基準は多岐に渡ります。届出自体もさることながら、日々の管理もたいへんです。
また、デジタル化が進んでいるとはいえ、届出の多くは紙ベース。提出書類のコピーをファイリングしておき、必要時はそれをさかのぼって確認事項を見つける…なんてこともざらにあります。

そんな風に手間のかかる施設基準の管理を、Notionの初歩的な機能を使って整理してみましょう。

Notionには「データベース」という機能があり、複数の共通した要素を持つものの管理に最適です。
入院料の施設基準にあてはめて言えば、「複数の共通した要素」とは、例えば看護配置や平均在院日数、在宅復帰率が挙げられます。実際に作成したデータベースをご覧ください。

こちらが、①入院基本料と特定入院料を管理するためのデータベースです。
今回使用するデータベースは、基本的にはこの「表(=テーブル)」のような形式で表示することになります。

入院料の名称に種別、届出日などの要素を入力してあります。
このように、まずは自院で届出済みの施設基準を表にして一覧することができます。もちろん、必要であればその他の要素も追加できます。

また、現在届出済みの施設基準と、新たに届け出たい施設基準を並べることで、要素ごとの比較が一目でわかるような使い方もできます。
平均在院日数について、地域一般入院料3を算定している現在は60日以下でいいが、さらに上の入院料1を目指すなら24日以内にしなくてはならない…といった具合です。

見直し時期とは、定期的に見直しが必要な基準を忘れずに管理するために設けた要素です。平均在院日数や在宅復帰率などは、随時患者さんの動きを把握し、基準を保っているかどうか確認しておく必要があります。
また、2024年の診療報酬改定で新設されたベースアップ加算については、3か月に1度の見直し&届出を考慮する必要があります。見直し時期や締め切りを設定しておくことで、「あと●日!」とカウントダウンを表示するような要素を追加することもできます。

また、Notionはデータベース内にメディアを含むことができます。メディアとは、画像や動画などのファイルのこと。
紙媒体で提出した届出書類をスキャンし、画像データとしてデータベースに格納できるため、紙の資料を捲って探す必要がなくなります。

しかし、これだけを見ると、Excel等の表計算ソフトでも同じものが作れそうです。わざわざ使い慣れないNotionを使う必要はないように思われます。

しかし、Notionの真価はここからです。

さきほどの①入院基本料と特定入院料のデータベースとは別に、以下のような②入院基本料等加算のデータベースを作成しました。

こちらも表(=テーブル)形式で表示された、シンプルなデータベースです。

ここで注目していただきたいのが、右端の「関連入院料」の列。ななめ上を指す矢印が表示されているのをご覧いただけるかと思います。

これは、Notionデータベース要素のうち「リレーション」と呼ばれる種類のもの。あるデータベースと他のデータベースを連携させることができます。先にお示しした、入院基本料と特定入院料のデータベースの右端にも、同じく「リレーション」の列があることをご確認ください。①入院基本料と特定入院料のデータベースと②入院基本料等加算のデータベースが紐づいており、お互いのデータベースにある施設基準を引用表示していることがわかります。

たとえば「地域一般入院料3」の行には、「診療録管理体制加算3」「データ提出加算1」「看護補助加算1」が引用されています。「リレーション」機能を利用して、どの入院料と入院料等加算が関連しているかを示しているのです。

こうすることで、入院基本料の施設基準を検討するとき、同時に入院基本料等加算についても忘れずに考慮することができます。その逆も同じです。

特掲診療料についても、同様のデータベースを作りました。

特掲診療料の中には、基準を満たすだけでよく、届出が不要なものもあるため、「届出要否」の要素を追加しています。

データベースは、共通の要素を表示することには長けていますが、共通性のない個別の要素については表(=テーブル)で管理するのには向いていない場合があります。

Notionでは、データベースに登録された施設基準ひとつひとつに、独立したページが存在します。
以下は、「入院ベースアップ評価料」を例に挙げたもの。

表(=テーブル)から該当の施設基準「入院ベースアップ評価料」を「開く」ことで、専用の独立ページが表示されます。ここには、データベースに表示されている要素が表示されているほか、さらに自由に文章などのコンテンツを追加できます。

今回の「入院ベースアップ評価料」の場合、3か月に1度の見直しが必要なことや、これまでの見直しの結果などをテキストで直接記入してあります。
データベースで共存している他の施設基準には、こうした要素は不要です。施設基準それぞれにそうした要素があるため、すべてを表(=テーブル)に表示してしまうと、非常に煩わしくなります。
そこで、表(=テーブル)の要素として表示するのではなく、個別のページを開いた時だけ見られるようにしておくのです。

最後に、Notionを利用することの大きなメリットは、複数人が同時に参照・編集できることです。
紙媒体での管理では、誰かが作業をしている間は利用することができません。コピーを取れば同時利用も可能ですが、ペーパーレスの時代の流れに逆行してしまうことになります。
Notionはwebツールであるため、アクセスを許可されたユーザーであれば同時にアクセス・参照ができます。「ちょっと確認したいだけ」でわざわざ紙媒体を探しに別の部署へ遠征する必要もありません。

以上、Notionによる施設基準管理の一例をご紹介しました。
今回使用した機能はNotionの基本的なものにすぎません。数式やボタン機能を利用し、さらに便利に・わかりやすく管理することも可能です。それらは今後また、あらためてご紹介します。
まずはNotionでどんなことができるのか、これまでのやり方とはどう違うのか?をざっくり感じていただけていれば幸いです。

読んできただきありがとうございました。

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