2024年診療報酬改定で新設された「地域包括医療病棟」。
既存の「地域包括ケア病棟」と名前が似ていますが、中身は全く違っています。
2つの病棟の概要を再確認し、比較してみました。
地域包括医療病棟
2024年診療報酬改定で新設された特定入院料です。
地域において、救急患者等を受け入れる体制を整え、リハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に担う病棟の評価を新設する。
厚生労働省 令和6年度診療報酬改定の概要 入院Ⅰ(地域包括医療病棟)
主な施設基準(抜粋)は以下の通り。
・看護職員配置は10対1以上
・常勤のPT、OT、STいずれかを2名以上、専任かつ常勤の管理栄養士を1名以上配置
・一般病棟用の重症度、医療・看護必要度で
①「A3点以上、A2点以上かつB3点以上、又はC1点以上」該当者が16%以上(必要度Ⅰ)又は15%以上(必要度Ⅱ)
②入院初日に「B3点以上」に該当する割合が50%以上
・平均在院日数は21日以内
・在宅復帰率は80%以上
・入院患者のうち、自院の一般病棟から転棟した者が5%未満
・入院患者のうち、救急搬送もしくは他院で救急患者連携搬送料を算定した者が15%以上
・脳血管リハ、運動器リハを届出ている
急性期一般病棟に救急搬送され入院する高齢者のなかには、病棟が想定する医療資源投入量と見合わない、軽症・中等症である患者が散見されてきました。たとえば、誤嚥性肺炎や尿路感染症などです。
また、治療が長引くことによりADLが低下、回復期へ転棟し入院生活が続くことで在宅復帰が遅れていく、という問題もありました。
そうした患者を中心に、手厚い救急受入れと早期のリハビリテーション介入をおこない、在宅復帰を目指すための病棟として新設されました。
地域包括ケア病棟
2014年診療報酬改定で新設された特定入院料です。
急性期後・回復期を担う病床を充実させるため、①一定の重症度、医療・看護必要度基準を満たす患者の診療実績、②在宅療養支援病院、二次救急病院又は救急告示病院等であること、③在宅復帰率の実績、④診療内容に関するデータの提出等の施設基準を設定した病棟等の評価を新設する。
厚生労働省 個別改定項目について
2024年現在の主な施設基準(概要)は以下の通り。
・看護職員配置は13対1以上
・常勤のPT、OT、STいずれかを1名以上配置
・一般病棟用の重症度、医療・看護必要度で、「A1点以上またはC1点以上」該当者が10%以上(必要度Ⅰ)又は8%以上(必要度Ⅱ)
・算定可能期間は60日間
・在宅復帰率は72.5%以上
・入院患者のうち、自宅等から入棟した患者が20%以上
・入院患者のうち、緊急入院した者が3か月で9人以上
・リハビリテーションを提供する患者については1日平均2単位以上提供している
高齢化社会を見据えた地域包括ケアシステムの一端を担う病棟として、急性期治療後、病状が安定した患者に対し、住み慣れた地域での療養を支援するために設置されました。傷病の治療後、ADLが低下した高齢者等をそのまま在宅へ帰すのではなく、リハビリを行い再入院を防ぐ役割があります。
また、普段は在宅にて療養している高齢者をスポットで受け入れる役割も担っています。
地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟の比較
両者の比較表です。
地域包括医療病棟 | 地域包括ケア病棟 | |
設置の目的 | 急性期の高齢者に対し、治療と共に早期リハビリを提供し、在宅復帰を目指す | 治療を終えた急性期後の高齢者に対し、住み慣れた地域への復帰を支援する |
看護配置 | 10対1以上 | 13対1以上 |
重症度、医療・看護必要度 | 16%以上(Ⅰ)/15%以上(Ⅱ) | 10%以上(Ⅰ)/8%以上(Ⅱ) |
平均在院日数 | 21日以内 | 規定なし(算定可能期間は60日) |
在宅復帰率 | 80%以上 | 72.5%以上 |
入院患者の条件 | 自院の一般病棟からの入棟が5%未満/救急搬送患者が15%以上 | 自宅等からの入棟が20%以上/緊急入院患者が3か月で9人以上 |
いずれの病棟も、高齢者の在宅復帰を目指しているという点では共通していますが、急性期の治療を行うかどうかに差があります。
少子高齢化がますます加速するなか、医療・介護の担い手不足を見据え、高齢者の在宅復帰を推し進める姿勢が強く表れていると感じました。
余談ですが、私が勤務する医療機関では地域包括ケア病棟のことを「地域包括」と呼んでいます。
これまではそれでよかったものの、地域包括医療病棟が新設されたことで、このままの呼び方では混乱を招く可能性があります。私が作る資料での表記を「地ケア」と変更してみたものの、長年呼び慣れた「地域包括」が刷り込まれてしまっているようで、修正には時間がかかりそうです。